鉗子購入時の油抜きの重要性

1:目的

従来、ディ-ラ-(問屋・業者・輸入元)より購入された器材(一般鋼製手術器械・カスト・バット等の容器類)は、工場にての製造上、様々な工業用の油が付着したままの状態で納品されます。

ご存知の通り、その状態で滅菌を行なうと、高圧蒸気によって油が器材の表面上に浮き出てきます。

また、さらにその状態を放置したまま滅菌を繰り返すと、浮き出てきた油が熱変性を起こし、通常の洗浄工程ではその汚れ(熱変性)は落とす事は非常に難しくなり、また器材の寿命も著しく短くしてしまいます。

その為にこの油抜き作業は器材の寿命・程度を保つ為に非常に重要な作業となります。

2:専門家による方法手順(参考資料です。使用準備及び使用器材一覧は省きます)

①器材浸漬の準備

浸漬用薬液(この専門業者はKポ-ル)を容器に10%希釈して、サ-モスタッドを使用して薬液を約40℃前後に保つ

②器材の浸漬

用意した浸漬用の容器に対象器材(鉗子・ピンセット・持針器等)を浸漬(付け込む)。
浸漬時間は約10時間程度です。浸漬する時、器材は出来る限り分解(展開)しておくと良い

③浸漬器材の磨き・すすぎ(1回目)

浸漬用容器から器材を取り出し、薬液がついた状態で平面・曲面部分はガ-ゼで拭き取る様に加工・ボックス部分は擦る様にして、その後流水で同様にすすぐ。

④器械すすぎ

流水ですすいだ器材は、超音波装置のすすぎ層に入れて器械すすぎを行なう。
すすぎを怠るとこの後の滅菌(焼き付け)時に薬液が器材に付着して器材の表面を痛めてしまいます。

⑤機械乾燥

機械乾燥機に入る器材は機械乾燥機へ入れ、入らない器材は(主に容器類)は高圧蒸気滅菌器のなかで予熱を使用し、完全に乾燥させる。

⑥滅菌(焼き付け)

完全に乾燥の終了した器材を洗浄用のカゴ等にまとめ、包み布に包んで滅菌を行なう。
この時の滅菌器の運転工程は、滅菌時間  135℃で10分  乾燥時間 15分~20分

⑦確認

滅菌(焼き付け)運転終了後、滅菌装置から器材をとりだし「エタノ-ル」を付けたガ-ゼで器材を拭いて見てガ-ゼが茶色(または黄色)に汚れたら油が残っています。また、器材全体がくすんでいる場合も同じです。

⑧磨き作業・すすぎ作業(2回目)

①~⑦の作業終了後油が残っている器材は、「メディポールラブ」を原液でガ-ゼ・歯ブラシ等に付け擦る様にして拭きとる
「メディポールラブ」は非常に強い塩素系の熱焼け処理・サビ除去剤なので長時間(5分以上)の器材への使用は避ける。
*以上は専門業者の方法・薬品です。

3:資料提供 クリーンケミカル株式会社 技術開発部

日本フリッツメディコ株式会社取扱い商品のスタンダードタイプ・エコノミータイプをクリーンケミカル株式会社技術部開発課に依頼し、どの条件で完全に油抜きが可能か試験をしてもらいました。
スタンダード手術器械15点・エコノミー手術器械15点

使用洗浄剤 : Sクリーン30 3%
            SクリーンOR 3%
洗浄方法 : 浸清洗浄
洗浄温度 : 80℃
洗浄時間 : 1時間
乾燥温度・時間 : 100℃で30分乾燥
高圧滅菌処理 : 120℃ 30分 1.2atm加圧

アルカリ洗浄剤と防錆油除去用添加剤を使用し、洗浄温度80℃の設定とし、これに超音波洗浄を加えた方法が最もオイル状残渣が見られない方法であると思われます。
この方法が器材表面の斑状のシミも、オイル状残渣も無く完璧な方法と思います。
なお、使用後は防錆剤として、安全性・経済性の高いスティンミルクS-200の使用をお奨めします。

4:簡易油抜き及びメンテナンスの方法

以上のように油抜きは専門家が行っても難しい作業です。専門スタッフがいないような施設では下記の方法でもかなりの効果があります。また、我々の実験でも、当社のスタンダード及びエコノミーシリーズも錆や汚れはかなり抑えられます。

工場出荷の現状

フリッツ一般鋼製手術器械は、ステンレス鋼のカット・型抜きから品質検査・ネイム入れまでには、40以上の工程があります。そしてこれらの鋼製手術器械は、ほとんどが手作りです。その間に、薬品や油・バフ掛け・磨きなどいろいろな物が付着します。
完成時には、きれいに拭き取って出荷しますが、油は逆につけて出荷しています。

簡易前処理

①熱い湯に、油汚れに強い中性洗剤(家庭用)を入れ、30分ほどつけてからスポンジの逆側の粗い部分で
 器材の表面の油を削る様に取り除く。(家庭で購入したばかりのナイフ・フォ-ク・スプ-ンの洗浄と
 あまり変わりません。自動洗浄機がお湯なのは汚れや油を取りやすくする為です)

②大きな鍋に水を入れ、沸騰してから器材を入れ約15分煮沸します。(昔シンメルで煮沸滅菌した要領です)

③煮沸後、ザルやカゴのような入れ物に移し、予熱で乾燥させます。この時、器材がなるべく重ならない様に注意します。
 触れるほどになったら、なるべく早くタオル等で水気や、汚れがあったらそれをきれいに拭き取る様にします。
 この時、器材のボックス部分やネジの部分を丁寧に拭き取ります。

④その後にオ-トクレイブなどで普通の滅菌過程に入ります。その時、変色や錆・油の熱変性など確認できたら
 同じような方法でそれを取省きます。目の細かい金ブラシ等で削る様に取省くと一層効果があります。

⑤工場の過程でバフ掛け作業があります。(磨きの工程です)この時バフの削りカスが器材のボックス部分等に
 入り込んでいる場合があります。②の工程でこれが器材の表面に錆びのように現れることがあります。
 これを器材本体の錆と勘違いしてのクレームがほとんどです。この汚れは中性洗剤では取れません。
 浸透性のある油(CRCなど)をボックス部分につけてバフを洗い流す様に取り除きます。
 その後、①からやり直すしかありません。

別のケース

1つ別のケ-スを紹介します。鉗子には現在ほとんど各社ネイムが入っています。昔は刻印でしたのでこのようなケ-スはありませんでした。現在は、薬品の化学分解を利用しています。要するに器材の表面を薬品で人工的錆びを作り中和液で仕上をする方法です。
この時、薬品が飛び散って表面に付着し気が付かないで出荷すると当然錆びが出てきます。これも削り取るしかありません。(バフをかけて取る)

ステンレスの表面不動態皮膜について

これはまだはっきり解明されていないようですが、ステンレス鋼の性質上、きれいに油抜きをした後、高圧高温の状態にされると鉗子の表面にステンレス特有の表面不動態皮膜ができ、酸化防止の働きをします。これが防錆効果となり鉗子を錆から守ります。
後は使用後のプロテインや汚れの除去をしっかり行えば、鉗子はきれいな状態でかなり長く使用可能です。さらに水性防錆剤等を使用するとなお効果的です。

※注意:以上の説明は一般鋼製手術器械のものです。マイクロ手術器械につきましては方法が違いますのでご注意下さい!

日本フリッツメディコ株式会社商品カタログより転載
メーカー名:日本フリッツメディコ株式会社